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【歯医者の疑問】デンタルX線と歯科用CTって何が違うの?見える世界と被曝量のリアル

皆さん、歯医者さんに行ったときに「レントゲンを撮りますね〜」と言われて、機械の前に立ったり、小さなフィルムを口の中に入れたりした経験はありませんか?

「さっき全体をぐるっと撮ったのに、また部分的な写真を撮るの?」

「CTを撮るって言われたけど、被曝量(ひばくりょう)は大丈夫?」

「そういえば、昔は毎回着せられていた重い防護エプロン、最近は着けないこともある気が…?」

そんな疑問を抱いたことがある方も多いはず。実は、歯医者さんで使うカメラ(レントゲンやCT)にはそれぞれに得意分野があるんです。

今回は、歯科医院でよく撮影する「デンタルX線」と「歯科用CT」にスポットを当てて、それぞれ何を見ているのか、気になる被曝量や「防護服の最新常識」も含めて徹底解説していきます!

1. 定番中の定番!「デンタルX線」はミクロの視点

まずは、歯医者さんで一番よく撮る、お口の中に小さなフィルムを入れて部分的にパシャリと撮るもの。あれを「デンタルX線(口腔内エックス線撮影)」と呼びます。

お口全体が写る大きな「パノラマレントゲン」と違って、デンタルX線は「特定の2〜3本の歯」を狙い撃ちして撮影します。

徹底的に調べる時は「全顎14枚」撮影する!

「えっ、部分的な写真をそんなにたくさん撮るの!?」と驚かれるかもしれませんが、実は歯周病の精密検査や、お口全体の本格的な治療を始めるときには、角度を少しずつ変えながらお口全体をブロックごとに分けて計14枚撮影する(全顎撮影)のが歯科の王道であり、最も正確な診査方法とされています。

なぜそこまで手間をかけるかというと、デンタルX線でしか見えない重要なサインがたくさんあるからです。

デンタルX線で「何を診ているか」

一言で言うと、「拡大してもボヤけない、超高解像度な2次元の世界」です。虫歯だけでなく、歯周病の進行度合いの診断においても、凄く重要な役割を持っています。

 ・歯肉縁下歯石(しにくえんかしせき)

歯ぐきの奥深くにこびりついた、目に見えない黒くて硬い歯石を見つけます。これが写ると「ここに歯周病の原因があるぞ」と分かります。

 ・歯周病による「骨吸収(こつきゅうしゅう)」

歯周病によって歯を支える骨がどれくらい溶けて(下がって)しまっているかを、1mm単位のシャープな画像で正確に判定します。14枚撮影することで、すべての歯の骨の状態を完全に把握できます。

 ・歯と歯の間の隠れ虫歯

見た目では絶対にわからない、隣り合う歯の隙間の初期虫歯をくっきり映し出します。

・ 歯の神経(歯髄)の状態

神経を取った歯の治療でつめたお薬が根っこの先まできちんと入っているか、根尖病巣(こんせんびょうそう)と呼ばれる根の先のウミがないかを確認します。

全体が写るパノラマ写真が「Googleマップの広域地図」なら、デンタルX線は「ストリートビューで看板の文字や足元の段差を拡大して見る」くらい解像度が高いのが特徴です。そのため、14枚撮影することで「お口全体の超高精密なストリートビュー」が完成するわけです。

2. 医療の進化が生んだ立体視!「歯科用CT」は3Dの世界

続いては、「歯科用CT(CBCT)」です。(当院では全ての患者様に歯科用CTを撮影しています。)

デンタルX線が「影絵(2D)」だとすれば、CTは「立体模型(3D)」。装置があなたの頭の周りをぐるっと1周してデータを集め、パソコン上で自由な角度から断面を切り出して見ることができます。

歯科用CTで「何を診ているか」

二次元のレントゲンでは「前の骨と後ろの骨」や「重なった根っこ」が1枚の影になってしまいますが、CTならそれらをバラバラに分解して立体的に診ることができます。

・ インプラント治療のシミュレーション

顎の骨の「厚み」「幅」「硬さ」を立体的に測定し、安全にインプラントを埋め込めるか計算します。

 ・親知らずと神経の位置関係

下顎の奥深くを通る太い神経(下顎管)と、親知らずの根っこがどれくらい近いかを立体的に把握し、抜歯のリスクを減らします。

 ・複雑に入り組んだ根管治療

レントゲンでは死角になる「隠れた神経の管」を3次元で見つけ出します。

 ・骨吸収の立体的な広がり

デンタルX線が「前後の重なり」に弱いのに対し、CTは歯の周囲360度、どこの骨がどれだけ溶けているかを立体的に丸裸にします。

3. 【徹底比較】ぶっちゃけ、被曝量ってどのくらい違うの?

医療用放射線と聞くと、「体に害はないの?」と心配になりますよね。

結論から言うと、歯科の撮影で受ける放射線量は、日常生活で自然界から浴びている量(自然放射線)よりもはるかに少ないのです!

「デンタルを14枚も撮ったら被曝量が心配…」と思うかもしれませんが、合計しても驚くほど微量です。日本で普通に暮らしていて1年間に浴びる自然放射線量や、他の放射線量と表で比較してみましょう。

※ mSv(ミリシーベルト)=放射線が人体に与える影響を表す単位

歯科用CTやデジタルレントゲンが低被曝な理由

現代の歯科医院はほぼ100%が「デジタルX線」を導入しています。昔のフィルムタイプに比べてセンサーの感度が良くなったため、必要な放射線量はさらに10分の1から5分の1にまで激減しています。デンタルを14枚しっかり撮影したとしても、ニューヨークに飛行機で1往復する被曝量とほとんど同じレベルなのです。

また、歯科用CTも「コーンビームCT(CBCT)」という歯科特化の技術を使っており、照射範囲がお口の周りだけに限定されているため、医科用のCT(全身用)に比べて数十倍から100分の1程度の被曝量で済みます。

4. 【最新の医学常識】「防護エプロンは着けなくても大丈夫」って本当?

ここで最新のトピックをひとつ。昔はレントゲン室に入ると必ず重い「鉛入りの防護エプロン」を着せられましたよね。しかし最近、「防護エプロンを着けずに撮影する歯医者さん」が増えているのにお気づきでしょうか?

「えっ、手抜き!?」「被曝しちゃうんじゃ…」と不安になるかもしれませんが、実はこれ、最新の科学的エビデンス(文献)に基づいた正しい対応なんです。

2024年、アメリカ放射線学会(ACR)やアメリカ歯科医師会(ADA)などの主要な専門機関が共同で「歯科撮影において、生殖腺(お腹)や甲状腺を保護するためのエプロンやネックガードの日常的な使用は推奨しない(必要ない)」という見解を発表しました。

理由は主に以下の2点です。

1. デジタル化で散乱線がほぼゼロに

現代のデジタルレントゲンは照射されるX線が極めてピンポイントかつ微量です。お腹まで飛んでいく「散乱線(はね返りのX線)」は測定不可能なレベルでゼロに近いため、守る意味がそもそもありません。

2. エプロンの映り込みによる「再撮影」のリスク

厚みのある防護エプロンがほんの少しズレて首や顎のラインに被ってしまうと、画像にエプロンの影が白く映り込んでしまいます。せっかくの3Dデータや高解像度画像が隠れてしまうと、診断ができないため「もう一回撮り直し(再撮影)」をすることに……。その結果、「良かれと思って着けたエプロンのせいで、余計に撮影回数が増えて被曝量が多くなる」という本末転倒な事態を招くリスクがあるのです。

※もちろん、「着けてもらった方が精神的に安心する」という患者さんの心理に配慮して、あえて今も着せている医院もあります。どちらの対応も間違っていませんので安心してくださいね。

5. まとめ:使い分けが「確実な治療」への近道

最後に、この2つの使い分けをまとめます。

 ・デンタルX線

「狭く、深く」。徹底的に診るときは「全顎14枚」撮影し、隠れ虫歯だけでなく、歯ぐきの奥の歯石(歯肉縁下歯石)や、歯周病による骨吸収の度合いを、圧倒的な高画質でミリ単位で見極めるもの。

・ 歯科用CT

「広く、立体的に」。インプラントや親知らずの抜歯、治りにくい根っこの治療など、構造を3Dで正確に把握して手術の安全性を高めるためのもの。

歯医者さんがレントゲンやCTを撮るときは、あなたの大切な歯と骨を、見落としなく安全に守るための「確実な裏付け」をとっている瞬間です。

これからはぜひ、診療室でモニターに映し出される画像を見ながら、「これが14枚並んだ私の歯の精密マップか!」「骨がしっかり写ってるな」と、ちょっとプロ目線でチェックしてみてくださいね!