コラム

歯周病

歯周病が全身疾患を招く?糖尿病・心疾患との関係を専門医が解説

「歯ぐきが腫れているだけだから、大丈夫だろう」

そう思っていませんか?

実は、歯周病はお口の中だけの問題ではありません。全身の健康に深く関わる慢性炎症性疾患です。歯周病と糖尿病・心疾患・早産など、全身疾患との関係は、近年の研究で次々と明らかになっています。

私は日本歯周病学会認定の歯周病専門医・指導医として、13年以上にわたり歯周病治療に携わってきました。診療の現場では、「歯周病を放置していたら糖尿病のコントロールが悪化した」「歯ぐきの治療をしたら血糖値が改善した」という患者様のケースを数多く経験しています。

この記事では、歯周病と全身疾患の関係を、最新の研究データをもとに専門医の視点から詳しく解説します。

歯周病と全身の健康が気になる方へ

歯ぐきの炎症は全身の健康にも関わる可能性があります。

まずは歯周病リスクを確認してみませんか。

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歯周病とは何か―慢性炎症が全身を蝕む

歯周病は、細菌感染によって引き起こされる慢性炎症性疾患です。

歯と歯ぐきの境目に「歯周ポケット」と呼ばれる溝が形成され、そこに歯周病菌が繁殖します。放置すると、歯を支える骨(歯槽骨)が溶け、最終的には歯が抜け落ちてしまいます。

問題は、炎症がお口の中だけにとどまらないことです。

歯周ポケット内で増殖した細菌や、炎症によって産生される「炎症性サイトカイン」と呼ばれる物質が血流に乗って全身を巡ります。これが歯周病が糖尿病・心疾患・早産など、さまざまな全身疾患と関連する主なメカニズムです。

「ペリオドンタルメディシン」

…これは、歯周病と全身疾患の関連性を研究・診療する学問領域のことです。20年以上前から世界中で研究が積み重ねられ、現在では歯周病が単なる口腔疾患ではないという認識が、医科・歯科の両分野で広まっています。当院でも、このペリオドンタルメディシンの考え方を大切にした診療を実践しています。

日本では成人の約8割が何らかの歯周病に罹患していると言われています。自覚症状が乏しいまま進行することが多く、「サイレントディジーズ(沈黙の病気)」とも呼ばれます。

歯周病は糖尿病の「第6の合併症」―相互悪化の負のスパイラル

糖尿病の合併症として、「網膜症」「腎症」「神経障害」「動脈硬化性疾患」「足病変」の5つが広く知られています。

そして今、歯周病が糖尿病の第6の合併症として認識されています。

これは医学的に非常に重要な事実です。なぜなら、歯周病と糖尿病は「どちらか一方が悪化すると、もう一方も悪化する」という双方向の関係にあるからです。

歯周病が糖尿病を悪化させるメカニズム

歯周病の慢性炎症によって、「TNF-α(腫瘍壊死因子アルファ)」という炎症性サイトカインが産生されます。

このTNF-αがインスリンの働きを妨げます。インスリンが正常に機能しなくなると、血液中のブドウ糖が組織に取り込まれにくくなり、血糖値が高い状態が続きます。これが「インスリン抵抗性」と呼ばれる状態です。

つまり、歯周病を放置することで、糖尿病が悪化するリスクが高まるのです。

糖尿病が歯周病を悪化させるメカニズム

逆に、糖尿病になると歯周病にかかりやすくなります。

糖尿病患者は健常者と比べて、歯周病の発症リスクが約2.6倍高いという研究データがあります。その理由は以下の通りです。

  • 免疫機能の低下による易感染性
  • 高血糖による唾液分泌量の低下
  • 血管の脆弱化による歯周組織の治癒遅延
  • 組織破壊の促進

ある患者様のことが今でも印象に残っています。50代の男性で、糖尿病のコントロールがなかなかうまくいかないとのことで来院されました。歯周病の検査をすると、重度の歯周炎が広範囲に及んでいました。歯周治療を進めていくと、数か月後には血糖値の指標であるHbA1cの値が改善し、内科の主治医からも「最近、血糖コントロールが良くなってきた」と言われたそうです。

歯周治療がHbA1c改善に寄与する可能性

歯周病治療が血糖コントロールの改善に関係する可能性が、さまざまな研究で報告されています。

特にⅡ型糖尿病において、歯周病治療によってTNF-αが減少し、HbA1c値の改善や炎症マーカーであるCRP値の低下が見られることが報告されています。

日本糖尿病学会は、「Ⅱ型糖尿病では歯周治療により血糖が改善する可能性があり推奨される」として、糖尿病治療において歯周治療を強く推奨(推奨グレードA)と提言しています。

これは非常に重要なメッセージです。

歯周病を治すことは、糖尿病を治すことにもつながる可能性がある。

また、逆に血糖コントロールを改善することで歯周組織の炎症が改善することもあります。双方向からのアプローチが、両疾患の治療において重要です。

歯周病と心疾患―見えないところで進む動脈硬化

心臓病と歯周病。一見、無関係に思えるかもしれません。

しかし、歯周病が心疾患のリスクを高める可能性があることは、多くの研究で指摘されています。

歯周病菌が血管を傷つける

歯周病の原因菌の一部は、血流に乗って全身を巡ります。これを「菌血症」と言います。

血管内に侵入した歯周病菌や炎症性物質が、血管壁に炎症を引き起こします。この慢性的な炎症が動脈硬化を促進し、心筋梗塞や狭心症などの心血管疾患のリスクを高めると考えられています。

また、重症の歯周病はインスリン抵抗性を介して、あるいは炎症を介して、糖尿病患者における心血管病変の発症や進行に影響を与える可能性があることも報告されています。

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歯周病と心疾患の関連を示すデータ

歯周病の影響は、肺炎・心臓病・リウマチなどにも非常に関係が深いとされています。

特に心疾患との関連については、世界中の多くの研究論文で取り上げられており、歯周病が心血管疾患のリスクファクターの1つである可能性が示されています。

当院では、問診の際に糖尿病・高血圧・心疾患などの全身状態を必ず確認しています。必要に応じて内科・循環器科などの医科と連携しながら治療を進める方針を取っています。歯周病はお口だけの問題ではないからこそ、全身を診る視点が欠かせません。

歯周病と早産・低体重児出産―妊婦さんへの重要なメッセージ

妊娠中の方にも、歯周病は深刻なリスクをもたらす可能性があります。

妊婦に歯周病がある場合、低体重児出産や早産が起こりやすいという報告があります。これは、歯周病の炎症によって産生される物質が、子宮収縮を促す可能性があるためと考えられています。

妊娠中はホルモンバランスの変化により、歯ぐきが腫れやすく出血しやすい状態になります。「妊娠性歯肉炎」と呼ばれるこの状態を放置すると、歯周病へと進行するリスクがあります。

妊娠を考えている方、あるいは妊娠中の方は、ぜひ一度歯周病の検査を受けることをお勧めします。

お口の健康が、赤ちゃんの健康にもつながっているのです。

歯周病の早期発見・早期治療が全身を守る

歯周病は、早期に発見・治療することで進行を食い止めることができます。

そして、全身疾患へのリスクも低減できる可能性があります。

歯周病のセルフチェック

以下の症状に心当たりはありますか?

  • 歯みがきのときに歯ぐきから血が出る
  • 歯ぐきが腫れている・赤くなっている
  • 口臭が気になる
  • 歯がぐらついている
  • 歯ぐきが下がって歯が長く見える
  • 冷たいものがしみる

1つでも当てはまる場合は、歯周病が進行している可能性があります。

早めに歯科医院での検査を受けることをお勧めします。

歯周病治療の流れ

歯周病治療は、段階的に進めていきます。

  • 精密検査…歯周ポケットの深さ、歯槽骨の状態をレントゲンで確認
  • 基本治療(スケーリング・ルートプレーニング)…歯石・歯垢の除去、歯根面の清掃
  • 再評価…治療効果の確認
  • 歯周外科治療…必要に応じて実施(歯周組織再生療法を含む)
  • メインテナンス…定期的なクリーニングと管理

当院では、認定歯科衛生士が在籍し、衛生士担当制を採用しています。検査から基本治療、メインテナンスまで、同じ衛生士が継続的にサポートする体制を整えています。患者様一人ひとりのお口の状態を長期的に把握することで、より精度の高い管理が可能になります。

糖尿病患者への歯周治療の注意点

糖尿病を合併している患者様への歯周治療では、いくつかの点に注意が必要です。

重度の糖尿病を合併している場合、歯周基本治療において抗菌療法(抗生物質の併用)を考慮すべきとされています。特に広範囲に及ぶ重度歯周炎や、器具が届きにくい深い歯周ポケットを有する症例では、抗菌療法の併用が推奨されています。

また、歯周外科治療を行う際の血糖コントロールの目安として、HbA1c 6.9%前後が参考値とされています。

当院では、問診で全身状態を詳しく確認し、必要に応じて内科主治医と情報共有しながら治療を進めています。

歯周病の研究最前線―歯科受診が糖尿病スクリーニングにもなる可能性

近年の研究では、歯科受診が糖尿病の早期発見につながる可能性も示されています。

歯槽骨吸収率(歯を支える骨の溶け具合)と高感度CRP値(炎症マーカー)が、糖尿病のスクリーニング指標として有用である可能性が、研究によって示されています。つまり、歯科でのレントゲン撮影や血液検査が、糖尿病の早期発見・早期治療につながる可能性があるのです。

また、歯槽骨吸収率および高感度CRP値が高いほど糖尿病のリスクが高くなることも明らかになっています。

これは、歯科と医科の連携がいかに重要であるかを示す、非常に興味深い知見です。

歯科医院を「歯だけを治す場所」と考えていた方も多いかもしれません。しかし、定期的な歯科受診は、全身の健康管理の一環として位置づけることができます。

岩野歯科クリニックの歯周病治療―全身を見据えた包括的アプローチ

東京都世田谷区成城にある岩野歯科クリニックは、成城学園前駅から徒歩1分の場所にあります。

当院の歯周病治療の最大の特徴は、「お口だけを診ない」という姿勢です。

ペリオドンタルメディシンに基づく診療

歯周病は細菌感染に伴う慢性炎症性疾患であり、全身に影響を及ぼします。当院では、このペリオドンタルメディシンの考え方を大切にしています。

問診では糖尿病・高血圧・心疾患などの全身状態を必ず確認します。必要に応じて内科・循環器科などの医科と連携しながら治療を進める方針を取っています。

咬み合わせの問題も歯周病の進行に関わるため、咬合評価も含めた包括的な診療を実践しています。

専門医・認定衛生士による継続的サポート

院長である私は、日本歯周病学会認定の歯周病専門医・指導医の資格を持ちます。また、2025年にはITI(国際インプラント学会)フェローにも認定されました。

認定歯科衛生士が在籍し、衛生士担当制を採用しています。同じ衛生士が検査・基本治療・メインテナンスまで継続的に担当することで、患者様の変化を細かく把握できます。

歯周組織再生療法・セカンドオピニオンにも対応

「他院で抜歯しかないと言われた」という患者様も、ぜひご相談ください。

当院では歯周組織再生療法にも対応しており、できる限り歯を残す治療を追求しています。歯周病科出身であるため、歯茎の手術や再植の手術も可能です。セカンドオピニオンも積極的に実施しており、他院の先生からのご紹介も受け入れています。

1時間の診療時間を確保した丁寧な診療で、患者様一人ひとりに向き合います。

まとめ―口腔ケアは全身の健康への投資

歯周病は、お口だけの病気ではありません。

歯周病は糖尿病の第6の合併症として認識されており、心疾患・早産・低体重児出産など、さまざまな全身疾患と深く関わっています。歯周病と糖尿病は相互に悪化させ合う「負のスパイラル」の関係にあり、歯周治療が血糖コントロールの改善に寄与する可能性も示されています。

日常の口腔ケアと定期的な歯科受診は、全身の健康を守るための重要な投資です。

「歯ぐきが気になる」「糖尿病があって歯周病も心配」「他院で抜歯と言われた歯を残したい」という方は、ぜひ一度ご相談ください。

どんな小さな疑問でも、お気軽にお声がけください。

対話を通じてより良い信頼関係を築くことが、良い診療への第一歩だと考えています。

岩野歯科クリニック

東京都世田谷区成城/成城学園前駅 徒歩1分

診療科目:歯科・歯周病科・歯科口腔外科・インプラント・ホワイトニング

土曜日診察・夜間対応(20:00まで)・女医在籍・クレジット決済可能

詳細・ご予約は公式サイトよりご確認ください。

歯周病予防を始めたい方へ

東京都世田谷区の岩野歯科クリニックでは、歯周病検査や歯石除去、定期メンテナンスを行っています。

お口と全身の健康維持を目指したい方はご相談ください。

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院長

岩野 義弘

経歴

1999年新潟大学歯学部卒業1999年日本大学歯学部歯周病学講座入局2005年歯科インプラント科兼任2012年日本大学歯学部歯周病学講座退局2012年岩野歯科クリニック開院2014年日本大学歯学部兼任講師2025年日本大学歯学部臨床教授2025年東京科学大学大学院 医歯学総合研究科
口腔再生再建学分野/口腔インプラント科 非常勤講師2025年国際インプラント学会
ITI(International Team for Implantology)フェロー

所属学会・資格